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美術検定への取り組み~俳優・辻凌志朗さん

更新日:2022年10月13日

 こんにちは、美術検定協会です。いよいよ11月7、8日に開催の「美術検定1~3級オンライン試験」まで1ヶ月を切り、勉強の追い込みに入られている方もいらっしゃるかと思います。今回は、ミュージカル「テニスの王子様」やハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」はじめ、数々の舞台やドラマ等に出演されている俳優の辻凌志朗さんに、美術検定への取り組みについてお話を伺いました。

※本記事は、2020年10月時点でのインタビューです。現在は美術検定2級を取得済。



―辻さんは昨年美術検定3級を取得されましたが、なぜ美術検定を受験されたのでしょうか。

 大学では美術史を専攻していたんです。卒業後に将来の職業として美術関係の道も考えるほどだったんですが、縁あって俳優という職業に就くことになって、それ以降美術は趣味として楽しんでいました。ただ、趣味で終わらせたくない思いもあって、美術の検定試験がないか調べてみたところ、見つかったのが「美術検定」でした。公式サイトで紹介されていた3級の問題集を試しに解いてみたら手応えを感じたので、3級に挑戦することにしました。

―もともと美術史を勉強されていたのですね。大学で美術史を学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

 高校3年生の時に学校の校外学習で行った、オディロン・ルドンの展覧会に大きな衝撃を受けました。高校まではサッ力一に打ち込んでいて、全然美術に関心があるようなタイプではなかったんです。恥ずかしながら、美術展に行ったのはそれが初めてでした。しかしそこで、どこか不気味な印象のあるルドンの絵画や、美術館という研ぎ澄まされた空間に、もうビビッときてしまって。その一日をきっかけに、すっかり美術に引き込まれていったんです。それから、もっと美術を学んでみたいと思うようになり、大学で美術史を専攻しました。

―ご自身のブログでも「初めて美術館を訪れ、初めて絵画という物体に触れ、その日その瞬間から、その世界に入り込んでしまった。たった一日で。」と書かれていましたが、美術館での体験がまさに辻さんの人生を変えたのですね!他に好きな作家や作品はありますか?

 卒業論文ではフェルメールを選んだのですが、やはりフェルメールには思い入れがありますね。大学に入ってからはいろいろな作品に触れましたが、フェルメールの作品は一目惚れでした。「数秒前に何が起こっていたんだろう」とか「人物は何を話しているんだろう」と思うような、想像カを掻き立てるような作品が多く、ストーリー性の豊かさに惹かれました。


 それから、クールべやミレーなど写実主義の作家も好きです。ありのままの現実を伝えようとした絵画からは、本当にその当時の状況がわかる気がして。貧しかったり、悲惨だったり、幸せとは言えない姿が描かれたものも多いですが、そうした人物の表現に人間味を感じます。


―美術史を学んだことで、プライベートやお仕事にも変化や影響はありましたか?

 それはすごくありますね。美術史を学んだことは、自分の人生において新しい世界がーつ広がったようなインパクトがありました。作品を通して、ここにはない世界を感じることが好きなんです。例えば、実際に中世ヨーロッパにタイムスリップすることはできませんが、16世紀の西洋絵画を前にして想像を膨らませ、絵画の世界を疑似体験することはできます。絵画に描かれている風景が見たいと、実際に海外に行ったこともあります。そんな風に一気に視野が広がりました。

 役者の仕事にとっても、プラスになっていると思います。感性が磨かれ、様々な視点を持てるようになると、芝居にも厚みがでます。舞台設定がファンタジーの場合、役や空間を思い浮かべるのが難しかったりするんですが、そういう時は絵画で見た風景や人物が助けになります。頭に浮かんだ具体的な絵画を参考に、空間を想像し、役を作り上げます。これからも、もっと作品を見て引き出しを増やしていきたいです。


―美術検定にむけてどんな勉強をされましたか?おすすめの勉強方法があれば教えて下さい。


 大学では西洋美術史の専攻で日本美術には馴染みがなかったこともあり、試験のためにしっかり勉強しました。美術検定をきっかけに学ぶ機会を得られてよかったです。やはり日本美術も、歴史的な背景を分かってから作品に触れると、より深く見ることができると実感しました。

 試験対策としては、とにかく作品名を覚えること、そして時代背景をしっかり押さえることが大切だと思います。問題集には必ず出題されるような問題が掲載されているので、それを解いておいた方がいいと思います。また、NHKで放映されている「日曜美術館」も見るようにしていました。

 あと、美術がテーマの小説を読むのもおすすめです。最近ですと、原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』という本を読みましたが、まさにピカソの生きた時代が描かれた作品で、作品の見方が変わりました。小説などを通して美術への親しみが湧くと、勉強へのハードルが下がり、集中して取り組めるようになるのではないでしょうか。


―これからどのように美術と関わっていきたいですか?

 InstagramのIGTVで「One day Art」という、1日1名画を紹介するチャンネルを始めました。コロナ禍での外出自粛期問中に、自分にできることで少しでも誰かの楽しみになれば、と始めた取り組みです。作品の下調べも動画の編集も、全て自分一人でやっています。


 美術は敷居が高く思われがちですが、人それぞれの価値観で服や家具などを選んでいるように、美術もそれぞれの価値観で見ていいと思うんです。美術がもっと身近になって、例えばデートで美術館に行こう、という声が少しでも増えたらいいなと思っています。

―お忙しいところありがとうございました。辻さんの美術の発信をこれからも楽しみにしています!



取材・文/梅澤真由・高橋紀子(美術検定協会・広報&編集チーム)


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