美術検定1級・2級は「実践問題」という試験があります。(参考:出題範囲 >)主に、美術鑑賞の場の役割や現状についての問題が出されますが、1・2級用公式テキストの1冊『新・アートの裏側を知るキーワード』に収まりきらない事柄が出題されることもあります。
1 出題意図
「美術検定」は単に美術史の知識量を問う試験ではありません。アートにあまり馴染みのない人々や社会とアートを結びつける「アートナビゲーター」の育成を最終目標としたプログラムです。
そのため、「アートナビゲーター」となる人たちには、美術史の基本的な知識のみならず、美術館がどんな歴史をたどって私たちの身近なところに出来上がってきたのか、社会の中でアートが置かれた状況や現状を知ることで、アートを総合的に考える材料にしていただければと考えています。
「実践問題」で取り上げる題材はいわば、みなさんがこれからのアートを考える際の材料の1つになってくれるようにと位置づけているのです。だからこそ、時事的な要素も採り入れ、もし、知らないことがあれば検定試験を機に自ら調べ、学び、考えを深めてほしいと考えています。
2 出題領域
「実践問題」では、一体何が問われているのでしょうか?
それは、大きく3つの領域に分けられます。
・美術史学習を通じて得た美術の制度・美術館の歴史に関する知見
・20世紀後半から現在に至る、アートと美術館を取り巻く環境に関する事柄
・アートに関する時事的な事柄
3 問題構成と正答を導く方法
これらの事柄について、「大問形式」で問を構成しているのが実践問題です。
大問形式の設問は、以下の要素で構成されています。
------------------------------------------
■大問の構造
[テーマ設問]
+
[複数の資料]
+
[小問(設問文と選択肢)]
------------------------------------------
問題中の[資料]については、公式テキスト(『美術史の基本』『続・美術史の基本』『新・アートの裏側を知るキーワード』)に記載がない作品や史実、展覧会などについては注釈を入れ、情報を知っているアドバンテージは極力解消しています。
また、小問で公式テキストに記載がない事柄を問う場合、[資料][小問の設問文][選択肢の文章]から適切な情報を取り出し、組み合わせることによって正答を導くつくりになっています。そこに、みなさんが学んできた知見を組み合わせると、どれが正答になるのか、判断ができるはずです。
ですから、もし知らないトピックが出題されていても、焦らずに設問と資料を読み。選択肢を比較検討すると、正答が見えてくると考えられます。
問題例
[テーマ設問]
[資料]
[小問の設問文]
[選択肢]
[資料]および、設問中のグラフを読み解くことで正答を導くことができます。
※2022年度過去問の一部から抜粋
4 試験対策
具体的な試験対策として挙げられるのは、
・『新・アートの裏側を知るキーワード』を読み込む
・web版『美術手帖』、『Tokyo Art Beat』などアートメディアのニュースを読む、過去1年分程度を振り返って読んでおく
この2つでしょう。とくに後者は興味深い記事も多いですから、時間を見つけてはチェックしてみてください。また、実践問題はテキストの分量が多いので時間が合否の鍵を握ります。普段からメディアや本でアート関係のテキストに触れ専門用語に触れておくと、本番も自然と読みやすくなるかもしれません。
みなさんの幸運を祈ります!
Comments