アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「豊田市美術館」

 みなさんこんにちは。愛知県在住のアートナビゲーター、尾崎一史と申します。今回ご紹介するのは、豊田市美術館。愛知県豊田市といえば、あの自動車で有名な町の美術館です。 豊田市は、同じ愛知県在住者、例えば名古屋市民でも行くのが少々大変なところだという印象がありますが、近年の公共交通機関の充実でずいぶん楽になりました。

 名古屋からは、地下鉄鶴舞線に乗って豊田市行きの電車に乗れば、そのまま名鉄豊田線の豊田市駅まで直行です。終点で下車し10分ほど歩くと、豊田市美術館にたどり着きます。ここ数年は、全国展開の美術展の巡回展の会場になる機会も増え(フェルメールもジャコメッティも来ました)、そして昨年2019年はあいちトリエンナーレの会場のひとつになるなど、重要性と注目度の高いアートイベントの会場になっています。そうしたことから、豊田市美術館は、愛知県内ばかりか全国のアートシーンにおいても、これまで以上に存在感のある美術館へと成長し、また県内外のアートファンの方々がこちらを訪れる機会も格段に増えたのではないでしょうか。


 では、美術館自体についての話に進みましょう。豊田市美術館でまず語るべきは、その建築。なにしろ世界的にも有名な建築家、谷口吉生の設計。外から眺めても、中に入っても、美的な要素も含めて大変よくできています。そして外のお庭もなかなか素敵。建築それ自体が、既にアート作品です。






      豊田市美術館は城跡の公園にある。その公園に面した側が美術館の正面




     庭園の池越しからの美術館外観と、美術館の敷地内にある茶室「童子苑」


    屋外には彫刻作品も。ヘンリー・ムア《坐る女:細い首》


 



美術館の敷地には、かつて小学校が建っていました。そのことを示す記念碑が敷地内にあります。この話とりあえず覚えておいてくださいね。後でコレクションを紹介する時に生きてきますので。





 それでは、建物の中に入ってコレクションを見ていきましょう。

 常設展示は、1階の展示室6と展示室7、2階の展示室5にあり、通常は展示室6と7には愛知県を中心としたこの地域出身の画家の、そして展示室5には日本と海外の画家の作品が展示されています。

 展示替えもありますが、直近の展示内容を少しばかり紹介すると、展示室5はグスタフ・クリムト、エゴン・シーレ、藤田嗣治、竹内栖鳳、速水御舟そして李禹煥といった、海外と日本の近現代のアート作品が、一方の展示室6と7には愛知県ゆかりの画家、宮脇晴の油彩画と、その妻の宮脇綾子のアップリケ作品が展示されております。常設展でアップリケ作品を展示している美術館というのは、結構めずらしいのではないでしょうか。


 豊田市美術館のコレクションは、絵画や彫刻だけではありません。

 1階と2階をつなぐ階段の横壁面には、古今東西の偉人の名前が記されていますが、この壁自体がジョセフ・コスースの作品《分類学(応用)No.3》の展示場所となっています。また階段を登って振り返ると、柱状の電光掲示板があります。見落とす人も多いかと思いますが、これもジェニー・ホルツァーの作品《豊田市美術館のためのインスタレーション1995》です。








壁面に展示されているジョセフ・コスースの作品と、天井から吊り下げられたジェニー・ホルツァー作品




それでは再び屋外へ出てみましょう。



 一見無造作に鏡が並べてある中庭的な空間ですが、これもダニエル・ビュレンの作品《色の浮遊❘3つの破裂した小屋》です。この空間のことをこれまで中庭と言っていたのですが、改めて調べてみたところ、「彫刻テラス」という正式名称がありました。


 また庭の池を眺めると、このようなものが設置されていました。






これも豊田市美術館のコレクションのひとつ、松澤宥の作品《白鳥の歌》です。実際、私も改めて調べてこれが作品だったと知りました、笑。


 他にも、正面入口の横にはリチャード・セラの鉄製巨大オブジェ《ダブル・コーンズ》があります。このように、コレクションは美術館の展示室だけに留まらず、美術館の屋内外に設置されていますので、どうぞお見逃しなく。




 ひとしきり屋内外の固定展示をご覧いただいた後は、「彫刻テラス」を横切った向こうにある離れの別館に行きましょう。





 別館、と言いましたが、厳密には豊田市美術館とは別の美術館、高橋節郎館です。とはいえ、「彫刻テラス」を横切ってすぐ隣ですし、豊田市美術館の特別展や常設展チケットを持っていれば入館できます。

 この館名の由来となっている高橋節郎は、文化勲章受章の漆芸家。豊田市で展覧会を開いたのが縁で、市が作品の寄贈を受け、このように彼の名を冠した美術館が建てられました。

 館内には、漆芸で飾られたハープをはじめ、高橋節郎の絢爛豪華な漆芸作品のいくつかが展示されています。そんな中、少しばかり違う雰囲気のする彼の漆芸作品が、《童子神》と題された漆芸のオブジェ。かつてこの地には小学校が建っていたと先に述べましたが、このオブジェはその童子山小学校に思いを馳せてつくられたものです(なお童子山小学校は、美術館建設に伴い、現在は豊田市内の別の場所に移転しています)。


 豊田市は自動車の会社がやって来る以前、“挙母”と呼ばれていた時代から、歴史的そして文化的な土壌が豊かなところです。そもそも豊田市美術館それ自体が、戦国時代の城跡に建てられています。昨年2019年には、挙母の地の歴史的な重要度を物語る展覧会「よみがえる織田信長像」が豊田市美術館で開催されました。それは織田信長の肖像画、それも歴史の教科書に頻繁に登場するあの有名な織田信長の肖像画の展覧会で、修復後初公開ということで注目度が高かったものでした。とはいえ、その修復後初公開がなぜ近現代アートの美術館で?と思うかもしれませんが、あの肖像画は豊田市内にある長興寺の所蔵品だそうで、その縁で展覧会が実現したようです。

 そのような事実を振り返ると、豊田市というところは経済的な面だけではなく、歴史的、文化的な面においても重要な都市だといえるでしょう。そして、そういう歴史的かつ文化的な背景を有する都市にある豊田市美術館は、今後の日本のアートシーンでこれまで以上に重要な役割を担うことになると思います。


 本年2020年は開館25周年の記念の年でもありますので、みなさんこの機会にぜひ豊田市美術館にお越し下さい。そうそう最後に、美術館グッズにはオリジナルデザインのペットボトル入りミネラルウォーターがあります。3種類のデザインですが、ひとつは豊田市美術館のロゴマーク、ひとつは豊田市美術館の建物の壁面、そして残りのひとつは豊田市美術館のコレクションの、クリムトの作品に由来します。デザインが違うだけで、全種類中身は同じ水。1本150円で、館内自販機で購入できます。お土産にどうぞ。






■豊田市美術館

〒471-0034 愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1

開館時間 10:00~17:30 (入場は17:00まで)

休館日 毎週月曜日(祝日は除く)、年末・年始、設備・保守点検・展示替等の期間

観覧料 常設展(高橋節郎館含む) 一般\300、高校・大学生\200、中学生以下無料

    企画展/常設特別展 HPにてご確認ください

Tel 0565-34-6610

URL https://www.museum.toyota.aichi.jp/

※豊田市美術館コレクションのリストは下記サイトでご覧いただけます

https://www.museum.toyota.aichi.jp/collection/



プロフィール/陶器の町、愛知県瀬戸市在住。たまたま出かけた国立新美術館に置かれていたチラシを見て美術検定の存在を知り、2010年美術検定1級取得。他にも世界遺産検定マイスター、アートエバンジェリスト(AE)の資格を取得。アートにとどまらない興味関心の幅広さとフットワークの軽さを強みに、文化ジャーナリストと名乗り趣味も仕事もアート三昧の日々…のはずが、最近はなぜかフレンチレストランについての原稿執筆に追われる日々です。

文化ジャーナリスト尾崎一史公式ブログ「ほんとのきもち」→https://ozaki2015.exblog.jp/

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