グッズでアートがもっと楽しくなる!「フェリシモミュージアム部™」
こんにちは、美術検定協会です。本年2021年の「美術検定1~3級オンライン試験」まで残り1ヵ月を切り、受験予定の皆さんは本格的な勉強の時期に差し掛かっている頃でしょうか。
今回は、そんな受験者の方々には息抜きにもなるような、日常使いのグッズでアートを身近に感じられる活動を展開する「フェリシモミュージアム部™」をご紹介します。お話を伺ったのは、雑貨やファッションのオンライン販売を手掛ける(株)フェリシモで企画開発や営業窓口・SNSを担当する、昨年美術検定1級を取得したアートナビゲーター・山成結花さんです。

―「フェリシモミュージアム部」では、さまざまなミュージアムグッズなどを開発されていますが、そもそもミュージアム部が設立したきっかけは何でしょうか。
弊社では、クラスター戦略の一環として、好きなことで事業化を目指す「部活動」という制度があります。現在その数は14あるのですが、例えば猫が好きな人たちが集まり、猫に関連したグッズ開発や保護猫活動を行なう「フェリシモ猫部」や、お寺文化から暮らしを豊かにするヒントを見つける「フェリシモおてらぶ」という活動が知られているところかもしれません。「フェリシモミュージアム部」も、社内で美術館や博物館を好きな有志を募ったところ、メンバーが集まってスタートしました。
ミュージアム部の初仕事は、正倉院所蔵の螺鈿紫檀五弦琵琶を模した「模造 螺鈿紫檀五弦琵琶エコバッグ&ポーチ」のグッズ開発でした。これが話題になったこともあり、ますます活動が盛んになりました。メンバーは他部署との兼務になりますが、本業の経験やスキルを持ち寄りながら、何よりアートが大好き!という熱意で業務を行なっています。メンバーそれぞれがアートファンの当事者なので、ミュージアムグッズを収集しているメンバーもいますね。

―御社はミュージアムグッズだけでなく、アートを題材とするファッションも手がけていらっしゃいますが、題材となる作品やアーティストをどのように選定しているのでしょうか。
「フェリシモミュージアム部」でつくる商品は、ミュージアムや企画展とのコラボレーションが多いのですが、そのコラボ先の魅力を伝えられる作品や、部員が好きな作品などを、版権関係なども配慮しながら選定しています。インパクトのある商品や暮らしに役立つ商品など、バラエティ豊かな品ぞろえで、さまざまな「好き」な気持ちに寄り添うことを意識しています。

ミュージアムとのコラボレーション企画としては、先に部活動を始めていた「フェリシモおてらぶ」が仏像の展覧会などでグッズの企画開発などを行なっていました。そのご縁もあって、「フェリシモミュージアム部」でも美術展のグッズ制作依頼をいただけるようになりました。グッズ好きな当事者である自身をお客様のひとりと考え、まだ世の中にないもの、本当に欲しいものを考えたりしていますね。
フェリシモでは、例えば名画をモチーフにしたネイルシールやレディースファッションなど、広く好まれているアーティストの有名な作品を題材にしたアート系の商品を作ることもありますが、そうした商品もミュージアム部で紹介しています。

―ミュージアムグッズなどを開発するにあたり、大切にされていることは何でしょうか。
開発の際は、作家や作品、関係各位への敬意を絶対に忘れず、ワンダー(おどろき)&シンパシー(共感)の気持ちを形にすることを目指して、オリジナルな商品を企画しています。ミュージアムグッズ、といってもただのモノではなく、展覧会の感動を共有する媒体だったり、もう二度とお目にかかれないかもしれない作品との得がたい出会いの記念や、思い出のよすがにもなるものだと思うのです。展覧会で得られた「なるほど!」という気づきや学びのフレッシュさが色褪せないよう、アート体験へのさまざまな思いをお客さまと同じ気持ちであずかる、という思いで制作しています。
私自身はミュージアムで販売されているポストカードが好きで、もう数百枚も収集しているのですが(笑)、それが高じて「マイミュージアムポーチ」を開発しました。外側のポケットに好きなポストカードを入れて、持ち歩くことができるポーチです。カードは交換できますので、その時々で展覧会で作品をみた感動や、ポストカードを手にした時の思い出を感じられるだけでなく、日常の暮らしの中でいつでもアートを楽しめます。
そのあと私はポストカードでは物足りなくなって、ポスターや複製品を買うようになり、近年は若手アーティストの作品を購入するようになりました。こうして、ミュージアムグッズがさらにアートを好きになるきっかけになっていったら、と願っています。

―山成さんは、まさに美術検定1級が目指すところの「より深い作品理解へ導くための、具体的なナビゲートの方法や手段を考える」アートナビゲーターの活動をなさっているのですね!「フェリシモミュージアム部」では、今後どんなことを計画されていらっしゃいますか。
そうですね、「フェリシモミュージアム部」は商品企画だけでなく、その先の美術の世界へ一歩誘うことを目指す、アートをナビゲートする役割も担っています。その点では、私自身としては大学時代に学んだ美術史や美術検定で培った美術の知識がとても役立っています。ただしあくまでも、一鑑賞者であるお客様と同じ目線で、美術の専門の方々との橋渡しを行なっている、という意識でしょうか。
美術館関係の方々とお話するにも、単にビジネスとしてだけではなく、個人の想いを込めて活動しているお話をすると、私たちが目指すところが伝わるように思います。
ありがたいことに、美術館からお声かけいただく機会も増えてきました。双方にとってよいご縁になるようなコラボレーションを、もっと進めていけたらと思います。
ちょうど昨日10月21日に、新商品「江戸わんこシリーズ」として、仙厓犬パスケース、芳中犬ポーチ、芦雪犬ペンポーチを発売開始しました。多様でユニークな表現が魅力の江戸美術の中でも「ゆるかわ」な犬たちに注目し、立体造形で再現しています。仙厓義梵・中村芳中・長沢芦雪の作品から飛び出してきたかのような犬たちを、暮らしの中で便利にかわいがっていただけるアイテムに仕上げました。「かわいい!」という気持ちを入口に、禅画に込められたメッセージや、奇想の画家が屏風に仕掛けたたくらみなど、作品のちょっとした解説や鑑賞の楽しみ方も、商品付属カードやブログなどで紹介しています。
こちらは、「モチーフの元となっている作品をみてみたいな」という気持ちまでナビゲートする一連の体験を目指して企画したものです。ぜひ皆さんにお手にとっていただけたら幸いです。

―お忙しいところありがとうございました。これからの「フェリシモミュージアム部」のさらなる展開を楽しみにしています!
取材・文/高橋紀子(美術検定協会・編集チーム)