こんにちは。関西在住のアートナビゲーター・琴見ゆりです。今回ご紹介するのは、京都府のアサヒグループ大山崎山荘美術館にて開催中の「丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展 ―追憶のオルソン・ハウス」展です。
この日は美術検定協会主催の鑑賞会で、アートナビゲーター(美術検定1級)の皆様と一緒に見学しました。
美術館は京都府大山崎町、天王山のふもとにあります。そう、歴史好きの方ならご存じの「天下分け目の天王山」。かつて羽柴秀吉と明智光秀の決戦の場となった歴史ある土地です。
JR山崎駅から約10分、長い坂道を登るとそこはもう異空間!緑豊かな庭園と、趣のある建物が私たちを迎えてくれます。(駅からのシャトルバスもあります)
美術館の本館は、大正から昭和初期に実業家・加賀正太郎が別荘として建てた英国風の山荘を改装したもの。登録有形文化財でもあるこの歴史ある山荘に、安藤忠雄設計のモダンな建築が融合し、唯一無二の空間となっています。
アンドリュー・ワイエス展を楽しむ
アンドリュー・ワイエスといえば、20世紀のアメリカで愛された国民的画家。
名作《クリスティーナの世界》(1948年、ニューヨーク近代美術館所蔵)は美術の教科書などでご存じの方も多いのではないでしょうか?
今回はその《クリスティーナの世界》の習作も展示されているということで、私も楽しみにしていました。
館内は撮影禁止ですが、入館するとカラー刷りの作品リストがいただけました。前期・後期で展示替えがありますので、リストでチェックしてみてくださいね。
ワイエスとオルソン・ハウス
《クリスティーナの世界》のモデルであるクリスティーナ・オルソンとワイエスとの出会いは、ワイエス家の別荘のあるアメリカ・メイン州。彼女が住む築150年の古い大きな屋敷「オルソン・ハウス」に心惹かれ、約30年にわたりオルソン家を訪れ交流を持ちました。
展覧会では、ワイエスが描いたオルソン・ハウス、そこに住むクリスティーナとアルヴァロ姉弟を描いた数々の作品を見ることができます。
荒野の中にたたずむオルソン・ハウス。様々な季節に描かれたその姿は、見ている私たちにも何かを語りかけてくるようです。またワイエスは、外観だけでなくその内部も詳細に描いています。納屋に置かれた穀物の袋や計量器、収穫したブルーベリー。そこに人物が描かれていることは少ないのですが、暮らす人々の気配が感じられるのが不思議です。
オルソン・ハウスが、ワイエスの画業の中で大きな意味を持つ場所だったということを知ることができました。
名作《クリスティーナの世界》の誕生
足が不自由であったクリスティーナが、自らの力で大地を這ってオルソン・ハウスへと向かう姿を描いた名作《クリスティーナの世界》。
本作はニューヨーク近代美術館に所蔵されていますが、今回の展示ではその習作の数々を見ることができます。
《クリスティーナの世界》習作
1948 水彩・ドライブラッシュ/紙 37.9×54.4 丸沼芸術の森蔵
© 2024 Wyeth Foundation for American Art / ARS, New York / JASPAR, Tokyo E5641
こちら以外にも、体の傾きを変えたものや、手だけをクローズアップしたものなどが複数あり、ワイエスが試行錯誤を重ねて作品を作り上げていった過程を見ることができました。
ちなみにこれらを所蔵している「丸沼芸術の森」は、若手芸術家の支援を目的として設立され、アーティストたちの制作場所となっています。
だからこそ、このように芸術家の制作過程が分かる習作も多く所蔵しているとのこと。
「もし自分だったら、どの部分から描くか?」などと想像しながら見るのも楽しかったです。
カフェでもワイエスの世界を楽しむ
2階のカフェでは、美術館にゆかりのあるリーガロイヤルホテルのスイーツがいただけます。
今回のスイーツは「The Olsons` Blueberries ~クリスティーナのおもてなし~」と「Wyeth`s Hometown Apples ~ワイエスのお気に入り~」の二種。
私はブルーベリーのパイをいただきましたが、甘酸っぱくてとてもおいしかったです。
テラス席は眺めも最高ですので、四季折々の風景も楽しんでくださいね。
コレクション展も見逃せない!
安藤忠雄設計の地中館「地中の宝石箱」には、あのモネの《睡蓮》のシリーズが常設展示されています!(展示替えあり。要問合せ)
地中に埋め込まれた円柱形のギャラリー。その静謐な空間で、モネの名作とじっくりと向き合うことができます。まさに至福の時間!
また、こちらの美術館は民藝のコレクションも見どころ。
バーナード・リーチや河井寬次郎をはじめとする名作の数々を楽しむことができます。
趣のある山荘のお部屋に展示された作品は、その空間と見事に調和していました。
この日はあいにくの雨でしたが、広い庭園では、春の桜、夏の睡蓮、秋の紅葉、冬の椿と季節の花々を楽しむことができます。
お越しの際には、庭園を散歩しながら京都の四季を感じてみてくださいね。
丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展
―追憶のオルソン・ハウス
会場 アサヒグループ大山崎山荘美術館
会期 前期:2024年9月14日(土)–10月27日(日)
後期:2024年10月29日(火)–12月8日(日)
時間 午前10時~午後5時※最終入館は午後4時30分まで
※前期・後期で作品を入れ替えます
休館日 月曜日(ただし、9月16日・23日、10月14日、11月4日の祝日・休日、および11月18日・25日、12月2日は開館)、祝日・休日の翌火曜日
丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展|展覧会|アサヒグループ大山崎山荘美術館
プロフィール/ アートナビゲーター(美術検定1級)・1級色彩コーディネーター(色彩検定1級)。関西を中心に、カルチャースクールなどで美術鑑賞講座を開講しています。
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