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CINEMAウォッチ「日常と非日常をつなぐアート プラド美術館 驚異のコレクション」

更新日:2020年7月30日

こんにちは。アートナビゲーターの深津優希です。美術館ドキュメンタリーは出尽くしたかと思いきや、まだまだのようです。今回ご紹介するのは、2020年7月24日(4月10日から変更されました)より公開の映画、世界各国から毎年300万人も訪れるというスペインの美術館のドキュメンタリー、「プラド美術館 驚異のコレクション」です。




ヴァレリア・パリシ監督による本作は、プラド美術館が200周年を迎えるのを記念して制作されました。約8700点もある驚異のコレクションを案内してくれるのは、アカデミー賞俳優のジェレミー・アイアンズ。わたしたちを約90分の旅に誘います。素晴らしい名画の数々が、スペインの歴史を物語ります。 愛され続けるプラドのコレクションを大画面で 2002年「プラド美術館展 スペイン王室コレクションの美と栄光」、2006年「プラド美術館展 スペインの誇り 巨匠たちの殿堂」、2011年「プラド美術館所蔵 ゴヤ―光と影展」、2015年「プラド美術館展―スペイン宮廷 美への情熱」そして2018年「日本スペイン外交関係樹立150周年記念 プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」と、日本でも人々を魅了し続けているプラドのコレクション。展覧会に足を運んだ方も多いのではないでしょうか。 そのプラドのコレクションから、たとえばベラスケス、ルーベンス、ティツィアーノ、マンテーニャ、ボス、ゴヤ、エル・グレコなど、美術検定受験者や美術好きのみなさんにはおなじみの巨匠たちの作品を、映画館の大画面で楽しむことができるのです。高画質の映像を大画面でみられる絶好の機会ですので、配信やDVDを待たずにぜひ映画館でご覧いただきたいです。 スペインの王や女王たちのお好みをチェック プラドのコレクションは、歴代の王や女王が「知識ではなく心で選んだ」作品で構成されています。画家にきちんと謝礼を払って得ているというのもプラドの特徴で、戦利品としてあちこちから奪ってきた美術コレクションとは成り立ちが根本的に違います。これらの作品について館長や学芸員が解説し、スタッフの仕事風景もまじえ、スペインの歴史と美術館の現在がぎゅっとつまったドキュメンタリーとなっています。王族が何を感じて選んだのか、そして長い時間を経て、立場のまったく違うわたしたちは同じ絵をみてどう感じるのか…。このブログを読んでいらっしゃるみなさんは、美術史などの情報を知ったうえで、どう解釈するか、どう鑑賞するかに関心のある方が多いのではないかと思うので、そんな意識をもってみてみると面白いかもしれません。 日常と非日常-アーティストの言葉 案内役のジェレミー・アイアンズの語りがとても心地よいのも、おすすめポイントの一つです。試写から戻ってからも英語版・日本語版のトレーラーを何度もみてしまいました。その語りの中から、とあるアーティストが残した言葉を紹介します。 “Art washes away from the soul the dust of everyday life.”  ―アートは魂につもった日常生活の塵を洗い流してくれる― これはパブロ・ピカソの言葉だそうです。気晴らし、気分転換、内省、瞑想、どういう言葉がぴったりくるかは人それぞれですが、アートは日常をちょっとだけ変えてくれるのですよね。アート以外でも、何か好きなもの、趣味などがそういう存在になっている方も多いと思います。日常の塵が洗い流されたら、世界の見え方も変わってくるかもしれません。前向きになれたり、やさしくなれたりするといいですね。もうひとつ、この映画の英語版紹介文にあった言葉がこちらです。 “When abandoned by Reason, Imagination produces impossible monsters; united with her, she is the mother of the arts and the origin of their wonders.” ―理性が働いていないとき、想像はありえない怪物を生み出す。   想像と結びつくことで理性は芸術の母となり、驚異の源となる― こちらはフランシスコ・ゴヤの言葉だそうです。辛辣な社会批判の含まれるゴヤの版画に、似たような言葉がタイトルになった作品があるのを思い出しました。アートとは理性と想像力が生む奇跡なのでしょうか。アートは非日常のようで、確かに日常につながっているのです。 図書館やカフェに行くように美術館にも日常的に足を運べば、上に紹介した言葉の意味を体験を通して理解できるかもしれません。とはいえ、プラドはさすがに遠いですね。まずは映画館へ、「プラド美術館 驚異のコレクション」をみに行きましょう。4月10日の公開をどうぞお楽しみに。 美術検定過去問題にもトライ! さて、4月の映画公開まで間がありますので、ちょっと予習をしてみましょう。美術検定公式サイトには模擬問題のページがあります。2014年の1級記述式問題を開き、【4】の問題をご覧ください。この映画のサイトやチラシなどに使われているプラド所蔵のディエゴ・ベラスケス《ラス・メニーナス》が載っています。問題は、この作品について小学校6年生向けの解説を書くというものです。問題用紙には作品図版だけでなく作品に関する資料も出ているので、それらを活用して作文することになります。実際に書いてみることはもちろんおすすめですが、問題用紙の資料を読むだけでもけっこう楽しいです。1級なんて難しい、と思わずに過去問題を開いてみてくださいね。 ◆映画オフィシャルサイト「開館200周年記念作品 プラド美術館 驚異のコレクション」 http://www.prado-museum.com/ ◆「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」(2018年に開催。終了していますが情報はみられます。) https://artexhibition.jp/prado2018/ ◆ゴヤの版画 『ロス・カプリーチョス』:理性の眠りは怪物を生む http://collection.nmwa.go.jp/G.1984-0057.html ◆美術検定 模擬問題1級(2014年の1級問題【4】をチェック!) http://www.bijutsukentei.jp/trial_1.html プロフィール 美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。

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