皆さん、こんにちは。アートナビゲーターの綿貫です。
新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、美術館の日時指定予約制が随分増えてきましたね。急に思い立って、ふらりと行ってみようということが難しくなりましたが、入館まで待たされたり、館内が過度に混雑したりすることがないので、ゆっくり、じっくりお気に入りの絵を鑑賞できるようになりました。
今回は、絵画の見方に関するおススメ書籍を3冊ご紹介します。見る視点が広く、深くなると、きっと美術館に行く楽しみがさらに増すと思います!
■『絵を見る技術』 秋田麻早子 著 朝日出版社 1850円+税
最初にご紹介するこの本は、まさに絵を見る技術を教えてくれます。
主題となる対象を三角形の枠内に収めて描くと、絵に安定感が生まれるというのはよく言われることです。例えば、ラファエロの『ベルヴェデーレの聖母』やジェリコーの『メデュース号の筏』は典型的な三角構図。構図についての章では、対角線や水平線・垂直線を補助線のように引いてみせながら、名画の構図がなぜ優れているのかを解き明かしていきます。
他にも、絵の中心(本書では「フォーカル・ポイント」と言っています)はどこにあるのか?画家は鑑賞者の視線をどう誘導しようとしているのか?バランスのいい絵とは?配色の妙とは?などなど様々な切り口で、豊富な事例を見ながら、絵画鑑賞のコツをつかむことができます。絵を見る楽しみがぐっと広がる1冊です。
■『観察力を磨く名画読解』 エイミー・E・ハーマン 著 早川書房 2500円+税
次に紹介する『観察を磨く名画読解』の著者、エイミー・ハーマンは美術史家で弁護士。アートの鑑賞を通して観察力や分析力を高めるためのセミナーを、主にビジネスマン向けに開催しており、仕事柄、観察眼が極めて重要なニューヨークやロンドンの警察官向けにもレクチャーした経験があるそうです。
本書では、様々なアート作品を見せながら、そこに何が描かれているのかを解説。目の前にありながら、いかに部分的な視点でしか対象を見ていないかがよくわかります。全体を見渡しながら、細部にも目を配るための見方、読み解き方のノウハウが盛りだくさん。マネやマティス、ホッパーなどの名画もいろいろ出てきます。
よく見ればわかるはずなのに、種明かしされて初めて気づくということを、何度も繰り返しながら読み進めるという稀有な読書体験でした。是非まわりの仲間にも知ってもらいたいと思った私は、勤務先の会社の社員を対象に、この本を題材にして、問題発見力向上のための研修を実施しました。ちなみにAmazonでは、ビジネス書とアート書の両方のカテゴリーに分類されています。
■『5歳の子どもにできそうでできないアート』 スージー・ホッジ 著 東京美術 2300円+税
最後にご紹介するのは、現代アートの読み解き方をわかりやすく解説した『5歳の子どもにできそうでできないアート』。
子どものいたずら書きやガラクタにしか見えない現代アートの作品が、なぜ評価されているのか? 子どもが描く絵と何が違うのか、どこに革新性があるのかを1つ1つの作品の画像を見ながら端的に解説していきます。1つの作品を、作品の画像、作品解説、作家紹介、子どもの図工との違い、といったコンテンツで構成された見開き2ページで紹介しています。
採り上げる作品は、マルセル・デュシャンの「泉」やカンディンスキー、マレーヴィチ、バーネット・ニューマンなど全部で100点。表紙は、キャンヴァスに切り込みを入れたルチオ・フォンタナの代表作がモチーフになっています。
いかがでしたでしょうか? いずれまた、アート体験をより豊かなものにしてくれるBooks on Artを紹介したいと思います。
プロフィール/神奈川県川崎市在住。本業は会社員。アートは趣味ですが、会社員生活が一区切りついたら、日本のアートをインバウンドの外国人観光客に紹介するような仕事に携わりたいと企んでいます。週末の趣味として、名画を模写した陶板画の制作をやっています。
2019年1月美術検定1級取得。世界遺産アカデミー認定講師。
当ブログでも紹介した、1日1点絵画を紹介するアプリ「DailyArt」英日翻訳スタッフ。
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