みなさんこんにちは、アートナビゲーターの深津優希です。2013年にスタートした #CINEMAウォッチ では、アートにまつわる映画をこれまでに30本ほど紹介してきました。今回は、それらのうちAmazonプライム・ビデオ(※)の配信で見られるものを中心にジャンル別にピックアップし、各ジャンルの中で特に見返したいと思った作品に★をつけてみました。劇場に行きそびれたり、なんとなく見そびれたりした作品を、おうちでのんびり楽しみませんか? 感想をSNSに投稿するときはぜひハッシュタグ #CINEMAウォッチ をつけてくださいね。
※プライム会員無料のものと、有料レンタルのものがあります。配信状況は変更になることがあります。
※Amazonプライム・ビデオのリンクを貼っていますが、他の配信サイトやレンタルDVDで見られる作品もあります。
美術館ドキュメンタリー
★「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」
わたしが最も魅力を感じた部分は、学芸員、修復家、教育普及担当、ガイドのひとたちによる熱いトークでした。来館者と作品の距離を近づける役割を果たす彼らの「語り」は本当に面白く、ぐっと引き込まれました。
「プラド美術館 驚異のコレクション」
プラドのコレクションは、歴代の王や女王が「知識ではなく心で選んだ」作品で構成されています。画家にきちんと謝礼を払って作品を得ているというのもプラドの特徴で、戦利品としてあちこちから奪ってきた美術コレクションとは成り立ちが根本的に違います。これらの作品について館長や学芸員が解説し、スタッフの仕事風景もまじえ、スペインの歴史と美術館の現在がぎゅっとつまったドキュメンタリーとなっています。
「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」
歴史の流れの中でコレクションに危険が及ぶ可能性が高まると、スタッフ総出で作品の疎開をしたそうです。作品が疎開して留守になった美術館の地下防空壕で、学芸員たちは知識の共有を日々行ったそう。人から人へ、それぞれの知識を伝えるのです。美術や美術史、美術館への熱意を感じました。また、前線から戻った兵士を迎えた美術館ガイドは、壁にかかった空っぽの額縁をさしながら、本来そこにあるはずの絵のお話をしたそうです。これには涙が出そうになりました。
※Amazonプライム・ビデオでは現在は配信されていませんが興味のある方はぜひDVDなど探してみてください。(23年1月現在)
「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」
「古いのは建物と収蔵品だけ」という言葉が心に残りました。500年前の作品を現代の私たちが観ることの意味、観た後の人生にどんな変化が起こるだろうか、そんなことを意識して展示を行なうのです(これは観る側としても意識したいと思いました。)具体的には新しい試みとして、ある展示室の照明を現代アーティストのオラファー・エリアソンに発注しており、その意外性にワクワクしました。いつか実際に観てみたいです。
芸術家の人生ドラマ
★「ジュゼップ 戦場の画家」
当ブログCINEMAウォッチ初の、アニメーション映画のご紹介です。差別や虐待を平気でする人間の恐ろしい姿を、優しいタッチのアニメーションによる鋭い描写で表現していて、それでいてそこかしこに優しい人間のユーモアもあり、良い映画に出会ったな、と感じました。
「ある画家の数奇な運命」
現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒターへの1か月に渡る取材をもとに紡いだ物語。モデルとなったリヒターの作家としてのスタート、フォト・ペインティングのうまれるところに立ち会ったような気持ちになりました。
「レオニー」
戦争もあり、つらい要素の多い物語ですが、イサム・ノグチの作品から感じるおおらかさ、あたたかさのようなものは、困難を乗り越えてうまれたものなのかな、と感じます。
「ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝」
ヘレーネ・クレラー=ミュラーという大富豪の女性は、ゴッホの死後、まだ無名だった彼の作品に魅了され、個人コレクターとして約300点を収集しました。そのコレクションが評価されたのはヘレーネの死後であり、作品が死後になって評価されたゴッホと共通しています。ふたりのもうひとつの共通点は、手紙をたくさん書いたこと。ゴッホの手紙を読み、また友人へ手紙を書くことで、ヘレーネはこれまで悩んできた信仰について等、考えを深めていきます。
「永遠の門 ゴッホの見た未来」
37歳で亡くなるゴッホ役に選ばれたのは63歳のウィレム・デフォーですが、自然の中を走ったり登ったりといった動作を十分な体力で演じ、また監督から絵の描き方のレッスンを受けて撮影に取り組んだそうです。映画のために130を超えるゴッホの絵を監督、主演俳優、画家チームで描いたというのにはびっくりです!
「北斎漫画」
新藤兼人監督による映画「北斎漫画」は、葛飾北斎の浮世絵師としての生涯を描いたドラマです。破天荒な北斎役を緒形拳が楽しげに演じるほか、娘・お栄を田中裕子、曲亭馬琴を西田敏行、魔性の女・お直を樋口可南子が演じています。老け顔メイクやコミカルな演技などコントのようなところもあり、プッと笑いながら気軽に観ましたが、米粒にスズメの絵を描いたり、竹ぼうきのような大きな筆で大達磨を描いたりするシーンは、北斎やるな…と思わせ、印象深いです。しかし、お直の白い裸体をタコが這うシーンのインパクトが何より大きかったかもしれません。昨年公開された「HOKUSAI」(主演:柳楽優弥)と比べてみるのも面白いのでは。
後編はまた来週公開します!お楽しみに。
プロフィール/美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。コロナ禍ではオンラインの鑑賞プログラムや、動画による作品紹介なども。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。
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