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CINEMAウォッチ「ヌーヴェル・ヴァーグ」


お久しぶりです、アートナビゲーターの深津優希です。映画を入口にアートを楽しむCINEMAウォッチ、今回ご紹介するのは、『6 才のボクが、大人になるまで。』(2014)『ヒットマン』(2024)『ブルームーン』(2025)を手がけたリチャード・リンクレイター監督の新作『ヌーヴェル・ヴァーグ』(2026/7/10(金)よりロードショー)。フランスの映画運動「ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波、の意味)」を描いた、実話に基づくフィクションです。映画好きの方ならにやにやしちゃうシーンがたくさんありますし、ヌーヴェル・ヴァーグに初めて触れる方はワクワク新鮮に楽しめると思います。




黒メガネの男、それがゴダール


舞台は1950年代フランス。映画批評誌に記事を書き、自分なら最高の映画を撮れるのにと、すずしい顔で減らず口をたたいているその男こそ、主人公ジャン=リュック・ゴダール。この映画は、彼が初めて自分の映画を撮る様子を、現場に居合わせたかのように見ることができるつくりになっています。

友達につられて大学の映画研究会に入っていた私にとっては、手作りの撮影現場の様子がとても懐かしく、ワクワクしました。ゴダールの映画も、今はなき飯田橋のギンレイホールで2本立てで見た記憶があります。


©JeanLouisFernandez
©JeanLouisFernandez


ヌーヴェル・ヴァーグとは

1950年代後半のフランスで、低予算のなかで工夫を凝らした映画製作を実践した若者たちがいました。既存のやり方に縛られず、例えばノンプロ俳優を起用したり、スタジオで台本どおりの撮影をするかわりに、ロケーション撮影と即興演出を取り入れました。3年間で162人の監督がそれぞれの最初の一本を撮り、映画界に新しい波を起こしたのです。

本作は、この聞いたこともない制作方法に驚き呆れ、それを楽しむ者やうんざりする者たちが、徐々に気持ちをひとつにしていく、というか、やむなく巻き込まれていく様子を描いた青春群像劇となっています。


©JeanLouisFernandez
©JeanLouisFernandez


美術検定的な視点

登場人物たちは様々な作家の言葉を引用したりルノアールに触れたりしますので、本好き、美術好きは一つ一つの引用に「お!」となるでしょう。またロケ場所について話す中でマン・レイ、デュシャン、ピカビア、キキの名前が出てきます。これらの人たちがいた場所となれば、ロケ場所はモンパルナスかな?と、ピンとくる方もいるでしょう。

知らない名前が出てきたら、あとで検索してもよいですし、新しく知るきっかけにもなります。ちなみに映画の公式サイトには登場人物の解説つきリストが載っていますよ。



『勝手にしやがれ』と、スターたち

世代や関心によっては、バンド名かな?とかジュリーの歌かな?と思う人もいるかもしれませんが、『勝手にしやがれ』はヌーヴェル・ヴァーグの金字塔のひとつとも言えるゴダールの映画のタイトルです(原題はÀ bout de souffle、息切れという意味)。主演はジャン=ポール・ベルモンドと、アメリカの若手女優ジーン・セバーグでした。今回の映画でスクリーンにこの二人を演じる俳優たちが登場した瞬間、ああよく似ているな、雰囲気がぴったり、と思ったのですが、見ているうちに本物にしか見えなくなってしまいました。

ゴダール役をギヨーム・マルベック、ベルモンド役をオーブリー・デュランが演じますが、この二人は、何とこれが長編デビュー。ヌーヴェル・ヴァーグの現場でも演技経験の無い人を起用していたことを彷彿とさせます。ジーン・セバーグ役には、『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』でリンクレイター監督と組んだ経験のあるゾーイ・ドゥイッチが抜擢されました。セバーグが映画の中でみせたファッションやヘアスタイルは、オリーブ少女たちにも大人気でしたよね。(時代の交錯する文章ですみません...)


©JeanLouisFernandez
©JeanLouisFernandez


タイムトリップしたドキュメンタリーのよう?

また本作は、当時を模したアスペクト比1.37:1のモノクロ映像で、VFXでパリの古い街並みを細部まで再現、そして衣装と美術にも力を入れています。まるで当時の撮影の裏側を記録したドキュメンタリー、いわゆるメイキング映像を見ているような感覚になります。『勝手にしやがれ』を知っているからこそ楽しめる部分も大いにありますが、未見の方にも耳寄りな情報があります。本家『勝手にしやがれ』に加えてゴダールの『気狂いピエロ』も、順次上映されます!この機会に、どうぞスクリーンでお楽しみください!


©JeanLouisFernandez
©JeanLouisFernandez


映画『ヌーヴェル・ヴァーグ』
7月10日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
© 2025 ARP - Detour Development LLC

監督:リチャード・リンクレイター 
プロデューサー:ミシェル & ローラン・ペタン 
脚本:ホリー・ジェント & ヴィンス・パルモ
出演:ギヨーム・マルベック、ゾーイ・ドゥイッチ、オーブリー・デュラン 
協賛:Chanel
2025/フランス/106 分/仏語・英語/5.1ch/1:1.37/モノクロ/原題:Nouvelle Vague /日本語字幕:井村 千瑞
配給:AMGエンタテインメント 
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
公式HP:https://nouvellevague-movie.com/



プロフィール/
深津優希(ふかつゆうき)
美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。オンラインの鑑賞プログラムや、動画による作品紹介なども。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。



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