【展覧会レポート】「浅田政志×大阪府20世紀美術コレクション展 画家と家族のここだけの話」大阪府立江之子島文化芸術創造センター
- bijutsukenteiweb
- 8月13日
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更新日:8月13日
大阪府立江之子島文化芸術創造センター(以下、enoco)で開催中の「浅田政志×大阪府20世紀美術コレクション展 画家と家族のここだけの話」は、戦後日本の絵画と家族写真を接続する、全く新しいアイデアの展覧会です。関西在住のアートナビゲーター、瀬尾真理子がレポートします。

家族写真×20世紀美術?
浅田政志といえば、「浅田家」で第34回 木村伊兵衛写真賞(2008年度)を受賞して話題を呼び、コマーシャルフォトの世界で活躍しながら日本各地でさまざまなアートプロジェクトを手掛ける、気鋭の写真家です。そして「大阪府20世紀美術コレクション」は、関西を拠点に戦後日本の美術界で活躍した現代美術作家の作品や、1990年代に開催した「大阪トリエンナーレ」の受賞作品など約7,900点からなる、大阪府所有のコレクション。この両者が出会うことで、一体どんな化学反応が起こるのでしょうか?
会場に入ってまず目に入ったのは、写真家からのメッセージ。
「今回僕は4人の画家の家族のもとにおじゃまして、思い出やお話をお聞きし、そのお話をもとに写真を撮りました。——」

展覧会は、写真家が画家の家族に話を聞き、その話をもとに画家にゆかりのある場所で撮影した「家族写真」を中心に構成されています。家族写真の中で画家が座るはずの場所に写っているのは、画家が生前に手掛けた絵画。家族写真と向かい合うように、被写体となった絵画の実物も展示されています。
その周りには、家族の話の断片からなるテキストと、話に関係する場所やモノの写真。展示空間に立って作品を眺めると、自分も画家の家におじゃまして「ここだけの話」を聞いているような、とても親密な空気を感じました。



写真が家族の物語を語る
この展覧会で取り上げられているのは、いずれも関西を拠点に、戦後の日本で活躍した4人の画家です。須田剋太(すだ こくた、1906〜1990)は、司馬遼太郎の「街道をゆく」の挿絵画家として知られていますが、展示されているのは原色でダイナミックに描かれた抽象画。伊藤継郎(いとう つぐろう、1907〜1994) はテーブルの花を囲む真っ赤な丸顔の子どもたちを、チューブから直接絞り出した絵具を盛り上げて描いています。京都の名刹、真如堂東陽院の僧侶でもあった齋藤眞成(さいとう しんじょう、1917〜2019) の絵は、自画像のような物語画のような、激しさと同時にやさしさも感じる幻想的な場面。そして、具体美術協会で活動していた上前智祐(うえまえ ちゆう、1920〜2018) は、さまざまな向きに並べられた点が集まって、陽炎のようにゆらめきだす抽象画。

家族写真の中に写っている絵画と、実物の絵画は同じ絵のはずです。でも、写真と実物を見比べるとなんだか印象が違います。家族写真を見て、画家のエピソードを知る。その前と後でもまた、絵画から受ける印象は変わっていきます。
家族写真は、絵画に合わせてコーディネートされた家族のファッションや室内の小物、絶妙な光の加減や家族の表情も見どころです。画家の人生、家族との関係性、家族から見た画家の人柄、それらをすべて詰め込んで撮影された家族写真は、見れば見るほど味わいがあり、いつまでも眺めていられそう。

「もっと知りたい!」に応える仕掛け
会場の奥にある上映ブースでは、撮影時のメイキング映像が流れていて、画家の家族と写真家の生の声を聞くことができます。笑い声が絶えず、とても楽しそうな撮影現場。リラックスした雰囲気の中で被写体の話と自然な表情を引き出す、写真家の魅力に唸りました。
展示会場はコンパクトで、入口から全体が見渡せるくらいのサイズなので、すぐに見終わるかな?と思ったら大間違い。映像を見ればまた家族写真が見たくなり、気付けばじっくりと2周、3周していました。
会場内に展示されている絵画は、画家1人につき1点、合計たったの4点。でも会場を出るころには「この画家についてもっと知りたい!ほかの作品も見たい!」と思うはず。そんな欲求に応えてくれるのが、展覧会の会場入り口にある「コレクションギャラリー」です。大阪府20世紀美術コレクションを常設展示しているこのスペースにも、「画家と家族のここだけの話」で取り上げられた4人の画家の作品が展示されています。

さらに、もっともっと多くの作品を見たい!という人には、「大阪バーチャル美術館」がおすすめ。大阪府20世紀美術コレクション収蔵作品のデジタルアーカイブを、作家名や作品名から探して見ることができます。

enocoが美術検定の応援館に!
enocoは2026年8月1日から新たに、美術検定の応援館に加わりました。美術検定の合格認定証を入館時に提示すると、特典として「enocoオリジナルミニ色えんぴつ」がもらえます!

enocoへのアクセスは、大阪メトロ中央線・千日前線「阿波座駅」から徒歩3分。大きな曲線と連続窓、温かい色合いのタイルが印象的な建物は、戦前期の貴重なモダニズム建築です(1938年築 大阪府工業奨励館附属工業会館)。
企画展のほかにも、さまざまなセミナーやワークショップが開催されていて、ギャラリーや多目的ルームをレンタルで利用することができます。地下にはアート・デザイン系のおしゃれな古本屋や、ゆったりとした空間で絶品のグルメバーガーが食べられるカフェも併設。無料で利用できる施設なので、ぜひ気軽に足を運んでみてくださいね。

浅田政志×大阪府20世紀美術コレクション展 画家と家族のここだけの話
会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco] 1階 Room 4
会期:2026年7月25日(土)−9月6日(日)
10:30−18:00(最終日15:00まで)休館日:月曜日
入場無料
https://www.enokojima-art.jp/kokodake
筆者プロフィール
瀬尾真理子(せお・まりこ)
アートナビゲーターTetoMeto
フリーランスのライター・編集者として企業のWebコンテンツ制作等に携わりながら、図書館などで対話型アート鑑賞のサロンを定期的に開催。
教育学修士(美術・工芸)、博物館学芸員資格あり。
Instagram→https://www.instagram.com/tetometo.art/?hl=ja




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