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【展覧会レポート】「浅田政志×大阪府20世紀美術コレクション展 画家と家族のここだけの話」大阪府立江之子島文化芸術創造センター

更新日:8月13日

大阪府立江之子島文化芸術創造センター(以下、enoco)で開催中の「浅田政志×大阪府20世紀美術コレクション展 画家と家族のここだけの話」は、戦後日本の絵画と家族写真を接続する、全く新しいアイデアの展覧会です。関西在住のアートナビゲーター、瀬尾真理子がレポートします。


浅田政志《画家と家族のここだけの話 須田剋太》2025年
浅田政志《画家と家族のここだけの話 須田剋太》2025年

家族写真×20世紀美術?

浅田政志といえば、「浅田家」で第34回 木村伊兵衛写真賞(2008年度)を受賞して話題を呼び、コマーシャルフォトの世界で活躍しながら日本各地でさまざまなアートプロジェクトを手掛ける、気鋭の写真家です。そして「大阪府20世紀美術コレクション」は、関西を拠点に戦後日本の美術界で活躍した現代美術作家の作品や、1990年代に開催した「大阪トリエンナーレ」の受賞作品など約7,900点からなる、大阪府所有のコレクション。この両者が出会うことで、一体どんな化学反応が起こるのでしょうか?


会場に入ってまず目に入ったのは、写真家からのメッセージ。

「今回僕は4人の画家の家族のもとにおじゃまして、思い出やお話をお聞きし、そのお話をもとに写真を撮りました。——」


浅田政志
浅田政志

展覧会は、写真家が画家の家族に話を聞き、その話をもとに画家にゆかりのある場所で撮影した「家族写真」を中心に構成されています。家族写真の中で画家が座るはずの場所に写っているのは、画家が生前に手掛けた絵画。家族写真と向かい合うように、被写体となった絵画の実物も展示されています。


その周りには、家族の話の断片からなるテキストと、話に関係する場所やモノの写真。展示空間に立って作品を眺めると、自分も画家の家におじゃまして「ここだけの話」を聞いているような、とても親密な空気を感じました。


浅田政志《画家と家族のここだけの話 上前智祐》2025年 展示風景
浅田政志《画家と家族のここだけの話 上前智祐》2025年 展示風景

浅田政志《画家と家族のここだけの話 上前智祐》2025年 展示風景
浅田政志《画家と家族のここだけの話 上前智祐》2025年 展示風景
上前智祐《作品(黄・点描)》1968年
上前智祐《作品(黄・点描)》1968年

写真が家族の物語を語る


この展覧会で取り上げられているのは、いずれも関西を拠点に、戦後の日本で活躍した4人の画家です。須田剋太(すだ こくた、1906〜1990)は、司馬遼太郎の「街道をゆく」の挿絵画家として知られていますが、展示されているのは原色でダイナミックに描かれた抽象画。伊藤継郎(いとう つぐろう、1907〜1994) はテーブルの花を囲む真っ赤な丸顔の子どもたちを、チューブから直接絞り出した絵具を盛り上げて描いています。京都の名刹、真如堂東陽院の僧侶でもあった齋藤眞成(さいとう しんじょう、1917〜2019) の絵は、自画像のような物語画のような、激しさと同時にやさしさも感じる幻想的な場面。そして、具体美術協会で活動していた上前智祐(うえまえ ちゆう、1920〜2018) は、さまざまな向きに並べられた点が集まって、陽炎のようにゆらめきだす抽象画。



浅田政志《画家と家族のここだけの話 伊藤継郎》2026年
浅田政志《画家と家族のここだけの話 伊藤継郎》2026年

家族写真の中に写っている絵画と、実物の絵画は同じ絵のはずです。でも、写真と実物を見比べるとなんだか印象が違います。家族写真を見て、画家のエピソードを知る。その前と後でもまた、絵画から受ける印象は変わっていきます。


家族写真は、絵画に合わせてコーディネートされた家族のファッションや室内の小物、絶妙な光の加減や家族の表情も見どころです。画家の人生、家族との関係性、家族から見た画家の人柄、それらをすべて詰め込んで撮影された家族写真は、見れば見るほど味わいがあり、いつまでも眺めていられそう。



浅田政志《画家と家族のここだけの話 齋藤眞成》2025年
浅田政志《画家と家族のここだけの話 齋藤眞成》2025年

「もっと知りたい!」に応える仕掛け


会場の奥にある上映ブースでは、撮影時のメイキング映像が流れていて、画家の家族と写真家の生の声を聞くことができます。笑い声が絶えず、とても楽しそうな撮影現場。リラックスした雰囲気の中で被写体の話と自然な表情を引き出す、写真家の魅力に唸りました。


展示会場はコンパクトで、入口から全体が見渡せるくらいのサイズなので、すぐに見終わるかな?と思ったら大間違い。映像を見ればまた家族写真が見たくなり、気付けばじっくりと2周、3周していました。


会場内に展示されている絵画は、画家1人につき1点、合計たったの4点。でも会場を出るころには「この画家についてもっと知りたい!ほかの作品も見たい!」と思うはず。そんな欲求に応えてくれるのが、展覧会の会場入り口にある「コレクションギャラリー」です。大阪府20世紀美術コレクションを常設展示しているこのスペースにも、「画家と家族のここだけの話」で取り上げられた4人の画家の作品が展示されています。


コレクションギャラリーに展示されていた伊藤継郎(左)と須田剋太(右)の作品。同じ画家でも会場内に展示されていた絵とは作風が大きく異なります
コレクションギャラリーに展示されていた伊藤継郎(左)と須田剋太(右)の作品。同じ画家でも会場内に展示されていた絵とは作風が大きく異なります

さらに、もっともっと多くの作品を見たい!という人には、「大阪バーチャル美術館」がおすすめ。大阪府20世紀美術コレクション収蔵作品のデジタルアーカイブを、作家名や作品名から探して見ることができます。


関西の20世紀美術について知りたいなら、「大阪バーチャル美術館」へ!
関西の20世紀美術について知りたいなら、「大阪バーチャル美術館」へ!

enocoが美術検定の応援館に!


enocoは2026年8月1日から新たに、美術検定の応援館に加わりました。美術検定の合格認定証を入館時に提示すると、特典として「enocoオリジナルミニ色えんぴつ」がもらえます!


enocoオリジナルミニ色えんぴつ
enocoオリジナルミニ色えんぴつ

enocoへのアクセスは、大阪メトロ中央線・千日前線「阿波座駅」から徒歩3分。大きな曲線と連続窓、温かい色合いのタイルが印象的な建物は、戦前期の貴重なモダニズム建築です(1938年築 大阪府工業奨励館附属工業会館)。


企画展のほかにも、さまざまなセミナーやワークショップが開催されていて、ギャラリーや多目的ルームをレンタルで利用することができます。地下にはアート・デザイン系のおしゃれな古本屋や、ゆったりとした空間で絶品のグルメバーガーが食べられるカフェも併設。無料で利用できる施設なので、ぜひ気軽に足を運んでみてくださいね。




浅田政志×大阪府20世紀美術コレクション展 画家と家族のここだけの話

会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco] 1階 Room 4
会期:2026年7月25日(土)−9月6日(日)
10:30−18:00(最終日15:00まで)休館日:月曜日
入場無料

https://www.enokojima-art.jp/kokodake


筆者プロフィール
瀬尾真理子(せお・まりこ)
アートナビゲーターTetoMeto
フリーランスのライター・編集者として企業のWebコンテンツ制作等に携わりながら、図書館などで対話型アート鑑賞のサロンを定期的に開催。
教育学修士(美術・工芸)、博物館学芸員資格あり。

Instagram→https://www.instagram.com/tetometo.art/?hl=ja


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