Books on Art:日本美術編

 皆さん、こんにちは。アートナビゲータの綿貫です。当ブログでアート関連のおススメ書籍をご紹介する“Books on Art”。前回のテーマは「絵画の見方」でしたが、今回取り上げるのは「日本美術」です。教科書的な本から芸術論、小説まで、様々な切り口で選んでみました。


『日本美術の歴史』 辻惟雄 著 東京大学出版会 2800円+税


 しっかりと通史を学ぶ教科書的な本としてはこれ。日本美術史研究の第一人者でもある辻惟雄氏が、自らの美術史観を軸に縄文・弥生時代から現代アートまで網羅的に解説しています。カラー図版も豊富ですが、かなりボリュームがあるので、気合を入れて取り組む意気込みが必要かも。4月26日には補訂版が刊行される予定です。


『ジャポニスム 流行としての「日本」』 宮崎克己 著 講談社現代新書 920円+税


 もう少し気軽に読めるものをお望みの方には、これはいかがでしょうか。19世紀後半、印象派の隆盛と時を同じくして、ヨーロッパのアート界で流行した日本ブーム「ジャポニズム」。浮世絵や扇子といった日本的なものを絵の中に描き込むことに留まらず、それは当時の西洋美術の構図や色彩にも大きな影響を与えました。本書では、ジャポニスムの始まりから終焉まで、ゴッホやモネ、ゴーギャンといった画家への影響を図版と共に紹介しながら、わかりやすく解説していきます。表紙は、コテコテのジャポニスムの一例、モネの作品《ラ・ジャポネーズ》です。


『芸術起業論』『芸術闘争論』 村上隆 著 幻冬舎文庫 540円+税/600円+税


 こちらは、海外でも評価が高く、世界を舞台に活躍する日本の現代アーティスト、村上隆の著書。それぞれ2006年と2010年に刊行され、3年前に文庫化されました。世界で評価されるにはどうしたらよいのか、もっと平たく言うならばアーティストが経済的に成功するには何が必要なのかを説く芸術マーケティング論「芸術には世界基準の戦略が必要である」と言い切り、日本美術史に通底する文脈から生み出した“スーパー・フラット”というコンセプトに基づいて、自らのアートを創造し続ける著者による熱い芸術論です。東京・六本木の森美術館で2020年7月~2021年1月に開催されていた「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」には、かつてサザビーズで約16億円の高額で落札された《マイ・ロンサム・カウボーイ》も展示されていました。その視点は、時として破格の値がつく現代アート作品の価値を、私たちが理解するのにも大いに役立ちます。


『北斎になりすました女』 檀乃歩也 著 講談社 1500円+税

 『眩(くらら)』 朝井まかて 著 新潮文庫 710円+税


 最後にご紹介するのは、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の娘、葛飾応為に関する書籍を2冊。葛飾北斎の三女としてこの世に生を受けた応為は、幼いころから父・北斎のそばで絵に親しみ、絵師に嫁いだものの、夫の絵の拙さを鼻で笑って離縁にされ、あえなく出戻り。あごが出ていたので、父からは「アゴ」と呼ばれながら、北斎の画業を陰で支え、自らも絵師として活躍した江戸のスーパー姐さんです。

 『北斎になりすました女』は、現存する文献を参考に、そんな応為の生涯を追ったノンフィクション。一方、『眩(くらら)』は、父の膝の上で初めて絵筆を握る5歳の応為の姿の描写から始まるフィクションです。この小説を原作にした宮崎あおい主演のドラマがNHKで放映されたので、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。《吉原格子先之図》《夜桜美人図》など、光と影のコントラストを描かせたら天下一品だと思います。


いかがでしたでしょうか? いずれまたアート体験をより豊かなものにしてくれるBooks on Artを紹介したいと思います。



プロフィール/神奈川県川崎市在住。本業は会社員。アートは趣味ですが、会社員生活が一区切りついたら、日本のアートをインバウンドの外国人観光客に紹介するような仕事に携わりたいと企んでいます。週末の趣味として、名画を模写した陶板画の制作をやっています。

(Instagram:hiro_watanuki_tokyo → https://www.instagram.com/hiro_watanuki_tokyo/

2019年1月美術検定1級取得。世界遺産アカデミー認定講師。

当ブログでも紹介した、1日1点絵画を紹介するアプリ「DailyArt」英日翻訳スタッフ。

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