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CINEMAウォッチ「ウェルカム トゥ ダリ」

みなさんこんにちは、アートナビゲーターの深津優希です。毎日本当に暑いですね...。夏らしいこと、していますか?わたしは水着を新調しましたが、甥っ子たちとビニールプールで水遊びが関の山。


今回は、美術検定界隈のみなさんにはシュルレアリストの代表的なアーティストとして、またクルクルのおひげの天才、はたまた奇人として知られるあの人を描いた映画を紹介します。そうそう、チュッパチャプスのロゴをデザインしたことも知られていますね




舞台は1974年ニューヨーク


その人の名は、サルバドール・ダリ。スペイン出身の画家、マルチアーティストです。9月1日公開予定の映画「ウェルカム トゥ ダリ」(メアリー・ハロン監督)は、1974年のニューヨークを舞台に、妻のガラとともにホテルに滞在して個展のための制作をする晩年のダリの日々を描いています。



物語は、画廊の新人スタッフの青年ジェームスの視点で進みます。ジェームスは、ダリがちゃんと作品を作るように見張るというミッションを遂行すべく、憧れの芸術家のアシスタントとしてホテルへ通います。そこでジェームスが見て聞いて経験した「ダリランド」はどんなもので、ダリはどんな人だったのでしょうか。


ジェームス(クリストファー・ブライニー)とダリ(ベン・キングズレー)



職業は「ダリ」。天才を演じきれば天才になる?


ダリといえば、ぐにゃりと溶けたような時計の絵を想像する方も多いでしょう。シュルレアリスム絵画は人気がありましたが、それだけで満足するダリではありません。彫刻やその他の表現活動も盛んでした。映画にもエピソードが出てきますが、アリス・クーパーの像をホログラムで作成したり、かのディズニーの元でアニメーション作品を制作したりもしています。(2016年のダリ展で映像を展示していましたね!)また、セレブやモデルが集まるパーティーで凝った仮装をし、人前では常に奇才ダリを演じ続けました。一方ではミューズでもある妻のガラに頭があがらず全てを牛耳られ、なんと彼女にお城をプレゼント。

奇想天外な言動は自己演出だったのでしょう。職業がダリ、ダリという人生を演じ切ったとも言えます。人生そのものが作品なのかもしれませんね


王様の仮装をするダリともう1人の“ミューズ”アマンダ(アンドレア・ペジック)



エディションとは・・!


映画では、ダリの表向きの奇抜さと、プライベートな場面での繊細さのコントラストが興味深く描かれています。そして恐妻ガラが本当に怖い。ダリがまだ売れない時代の貧しさを知っているからこそではありますが、お金のためにダリを叱咤(多め)激励(少なめ)して働かせます。そしてそのお金を若い恋人に貢いでしまいます。ダメじゃないの!

また、ダリにサインさせた白紙の束をダリ作品の複製業者に売るなど、作家のマネージャーとしてありえないこともしてしまいます。この金の亡者め〜!美術検定的には、「エディション※」の概念をあらためて確認してほしくなる場面でした

共依存的なあぶなっかしい夫婦関係なのに、どこか滑稽でキュートに演じたベン・キングスレーとバルバラ・スコヴァに拍手したくなりました。


※エディション

版画、写真、ブロンズ像など複製可能なアート作品において、あらかじめ販売点数を定め、50点なら1/50、2/50、3/50とナンバーをふる。あとから質の悪いピースが勝手に売られたりしないよう管理し、点数を限定するため価値が上がる。


気性の激しい妻のガラ(バルバラ・スコヴァ)


ついでに若いダリも


美術検定の試験に向けて勉強中の方も、ちょっと息抜きもかねてぜひ劇場へ。ジェームスと一緒にダリランドを体験してきてください。

そして「ウェルカム トゥ ダリ」で70歳頃のダリを見たあとには、配信(Amazonプライムビデオ他)で「天才画家ダリ 愛と激情の青春」を見ると、奇才ダリのできるまでを垣間見られますよ。


若き日のダリ(エズラ・ミラー)も回想シーンで出てきます!





 映画「ウェルカム トゥ ダリ」

 9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開。配給:キノフィルムズ
https://dali-movie.jp/
 
東京のヒューマントラストシネマ有楽町と新宿武蔵野館の2館では9月1日(金)~9月3日(日)の3日間で来場者全員にチュッパチャプスを1本プレゼント、そのほかの全国の劇場では先着順でチュッパチャプスが1本プレゼントとなる(なくなり次第終了、一部劇場は除く)
 

写真クレジット:© 2022 SIR REEL LIMITED




プロフィール/美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。コロナ禍ではオンラインの鑑賞プログラムや、動画による作品紹介なども。このブログでは、アート
が題材となった映画をご紹介しています。


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