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CINEMAウォッチ「レンブラントは誰の手に」

更新日:2021年2月19日

みなさんこんにちは、アートナビゲーターの深津優希です。

2021年もみなさんが健康で、アートを楽しむ時間を持てますように願っています。

ステイホームのおともに、過去のCINEMAウォッチやおすすめ書籍の投稿、そして美術検定Twitter#おうちでアートを学ぼう もぜひご活用ください。と、いいながら、今回ご紹介するのは2021年2月26日に公開予定の新作映画です。オンライン試写で一足お先にみることができました。劇場でご覧になる場合には、感染症対策を万全にしておでかけくださいね。



「みんなのアムステルダム国立美術館へ」監督の新作

以前CINEMAウォッチでもご紹介したドタバタ美術館ドキュメンタリー「ようこそ、アムステルダム国立美術館 へ」「みんなのアムステルダム国立美術館へ」の監督ウケ・ホーヘンダイクの新作「レンブラントは誰の手に」 がやってきます!監督がアートスリラーと呼ぶこちらは、ハラハラドキドキのドキュメンタリー。レンブラント作品の所有をめぐって、今回も様々な登場人物が随所で個性を発揮します。

冒頭では若手の画商や美術館 学芸員が野望を語り、彼らを応援するような気持ちでみていくと、徐々にスリリングな展開に。お屋敷に先祖伝来の美術品を持っている貴族、誰もが名を知る富豪、名画を手に入れることに興奮する新興コレクター、絵画の修復家、画商と並走する広報担当、レンブラント研究家など、それぞれの思惑が交錯し、画商同士、美術館同士、国同士が対決する様子も見ものです。更には誰の元に作品があるかによって、作品をみる環境は大きく変わり、そもそも一般人は目にすることができない場合も多い、という現実を見せつけられました。映画の原題が「マイ・レンブラント」なのも納得です。人類の遺産を一般公開してくれる美術館って、本当にありがたいですね。


画商のおしごと

映画に出てくるレンブラントの《ヤン・シックスの肖像》という作品は、今もシックス家に所蔵されており、肖像画のモデルとなったヤン・ シックスから数えて11代目のヤン・シックスがこの映画の主人公の一 人、野望に燃える若き画商です。

以前にCINEMAウォッチで紹介した「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」、現在はDVDや配信でみることができますが、ご覧になった方はいらっしゃいますでしょうか。あの映画は年老いた画商が主人公で、仕事人生の最後を飾る大きな取引をしたいと、作者不明とされる作品を巨匠による名画と信じて調査をする、というお話でした。今回“レンブラントらしき”作品を入手して、はっきりさせたうえでコレクターに売ろうとする若い画商にも、同じギラギラを感じました。お金になるというだけでなく、自分の研究してきた画家、誰もが知る巨匠の知られざる作品を発見したかもしれない、ということにゾクゾクしているんですよね。家族や身近にいる人は大変でしょう。ヤン・シックス頑張って!



レンブラントってどんな画家?

改めまして、レンブラントとはどんな芸術家でしょうか? レンブラントは17世紀オランダで活躍したバロックの画家。バロック絵画の特徴は、劇的、深い色彩、コントラストの強い明暗法などがあります。ここで、2020年11月にオンラインで実施された美術検定2級の本試験問題を見てみましょう。


〈問題〉

レンブラント作「夜警」に用いられている、光と影の対比によって画面に劇的な効果を与える絵画技法はなんですか。


〈選択〉

1)グラデーション

2)キアロスクーロ

3)スフマート

4)デフォルマシオン


正解は2)、キアロスクーロです。イタリア語で明暗という意味です。このように光と影の表現はレンブラントの重要な特徴の一つですが、モデルの内面をあぶり出すように描いたこともまた、忘れてはなりません。

レンブラントが肖像画を描くように、ホーヘンダイク監督はこの映画を撮ったと言います。登場人物に寄り添い、共感もしながら、美化したりはせず、そのままに。絵が置かれた部屋の光の様子や、ドラマティックな展開もバロック的なのかもしれませんね。あの場面、この場面と、何度も見返したくなります。アートスリラーですから、何がハラハラドキドキなのかはネタバレしないでおきましょう。レンブラントは、誰の手に? どうぞご覧ください。


※作品の細部にクローズアップ!絵画修復家の仕事を間近で捉えた本編映像の一部を特別に公開!


◆映画公式サイト「レンブラントは誰の手に」


◆CINEMAウォッチ「みんなのアムステルダム国立美術館へ」「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」 http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-174.html


◆CINEMAウォッチ「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」 http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-315.html



写真クレジット:©2019DiscoursFilm


プロフィール

美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をし ています。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。


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