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CINEMAウォッチ「ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇」


みなさんこんにちは、アートナビゲーターの深津優希です。この「CINEMAウォッチ」ではアートワールドのドキュメンタリーや、作家の人生の物語など、アートがテーマの映画を紹介してきました。(総集編*前編/後編もぜひご覧ください。)今日は少し「アート」の範囲を広げて、ファッションがテーマの映画を紹介したいと思います。2023年9月29日公開予定の「ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇」は、とてもワクワクする作品です!


ゴルチエってどんなひと?


ファッション・デザイナーのジャンポール・ゴルチエについて、どんなイメージをお持ちですか?私がまず思い浮かべたのは、マドンナのコンサート衣装。コルセットのようなデザインで、胸の部分は円錐形にとがっていました。当時、とても話題になっていたことを覚えています。

ファッション界の異端児と呼ばれるゴルチエですが、今回の映画の中で本人の語るところによると、過去や伝統や常識などを打ち破ってやろうなどとは考えておらず、ただ好きなものを追及しているようです。好きなものとして、幼少期に影響を受けた映画「偽れる装い」(1945年)や、着せ替え人形のかわりにしていたテディベアのナナ、すてきな赤毛の幼馴染ジャン・トゥーレ、マリーおばあちゃん、公私共にパートナーであったフランシス・メヌージュなどが紹介され、だいぶきゅんとします...。



ファッション・フリーク・ショーってなあに?


このドキュメンタリーは、ゴルチエの自伝的なストーリーをベースに、彼の各時代の代表作を次々と登場させた舞台「ファッション・フリーク・ショー」のメイキング映像です。この舞台は2023年5月〜6月に東京公演が開催されていました。ファッションと、70年代・80年代の音楽と、個性あふれるダンサーたちが繰り広げるにぎやかなショー。始まってすぐにからだが自然に動きだしてしまいそうな音楽にわくわくし、ポップでキッチュでエレガントなショーとその舞台裏に夢中になります。舞台演出の一部には映像も駆使されているのですが、その撮影シーンが見られるのもこの映画のおいしいところです。


また、ゴルチエと制作スタッフたちとの関係性も注目ポイントです。天才デザイナーに振り回されるスタッフたちというありがちで単純な構図ではなくて、スタッフや出演者の意見に耳を傾け、良いと思ったら素直にほめて取り入れるゴルチエの姿勢が印象的でした





アートナビゲーター的に注目したのはここ!


ショーの演出用の映像に出てくる手術のシーンがシュール!現代のシュルレアリスム?映画「未来世紀ブラジル」の美容整形も思い出したりしましたが、もう少し平和な感じ。

*1985年公開のSF映画。近未来のとある都市の暗黒社会を描いた。


長年ゴルチエのもとで制作をしてきた職人がショーのために呼び戻され、生き生きとして活躍していたことから、スタッフといい関係を築けているんだなと感じました。


衣装を着て舞台に登場するのはファッションモデルではなく実力・個性に溢れるダンサーたち。歌や演劇的要素もありパフォーミングアーツとして楽しめます。






用意されたプラットフォームシューズで足を痛めるダンサーも。様々なブランドのファッションショーのランウェイで転ぶモデルは散見されますが、そんな靴で激しく踊るのは至難の業ですね。

そういえば靴を美術館で展示品として見たことを思い出しました。例えばレディ・ガガの靴で知られる舘鼻則孝の作品。履いて歩けるのか体験してみたいところ。

*日本の現代アーティスト。遊女に関する文化研究をもとに友禅染を用いた着物や下駄を制作する。



「ファッション・フリーク・ショー」の東京公演を見そびれてしまった私は、今回の映画を見てますますショーを見たくなってしまいました。再来日に期待したいです!







映画「ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇

9月29日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、シネマカリテほか全国公開。配給キノフィルムズ
https://gaultier-movie.jp

舞台「ファッション・フリーク・ショー」
https://fashionfreakshow.jp
 

写真クレジット:© CANAL+ / CAPA 2018





プロフィール/美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。コロナ禍ではオンラインの鑑賞プログラムや、動画による作品紹介なども。このブログでは、アート が題材となった映画を
ご紹介しています。


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